突然現れた御曹司は婚約者
ランチのあとは映画だったから好奇の目から逃れられたけど、普段、人から見られることはないから無駄に疲れてしまう。


「ウィンドーショッピングはちょっと厳しいかもです」


映画館から出てすぐに蓮に伝えた。


「具合悪いのか?」
「いえ、そういう訳じゃなくて…」


やっぱりここでもまた見られてる。

女性たちの方をチラッと見ると、その視線に蓮も気付いた。

そして彼女たちの方をジッと見るものだから女性たちは頬を赤らめている。

ただ目が合っただけで女性を喜ばせることの出来る男性なんて早々いない。

そんな男性の隣にいるのが私だなんて蓮の価値を下げてしまいそうで、少しずつ距離を置く。

でも蓮はグイッと私の腕を引き、肩を抱いた。


「栞は耳が悪いんだな」


そんなことないと蓮を見上げると、蓮は身をかがめて耳元で囁いた。


「ペアルックで可愛い、って言ってたよ」
「あ!」


そういえば忘れてた。

蓮の言ってることは私を安心させるためで、違うと思う。

でもこの服装に目が止まるというのは一理ある。


「近くに洋服屋さんありますかね?」


ショッピングモールだからあるはずだよね?

辺りを見渡し、足を進め、洋服屋さんに入ろうとする私を蓮が止めた。


「このままでいい。『俺の彼女可愛いでしょ?ペアルック着ちゃうくらい仲良いんだ』ってみんなに見せつけたいんだから」
「それは私が耐えられませんっ!」


怒って蓮を見上げると、彼は満面の笑みで私の体を抱き締めた。


「恥ずかしがって怒ってる顔も可愛いな」
「ちょっと!公の場でなにしてるんですかっ!」


蓮越しに周りを見れば注目を集めている。

恥ずかしさも限界で思いっきりもがくと、笑って離してくれた。

でも手はしっかりと繋がれて、私を引っ張るようにして足早に進み出した。


「どこに行くんですか?」
「ふたりきりになれるところ」
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