突然現れた御曹司は婚約者
「退院したら真っ先にお墓詣りに行こう。栞の家族のお墓は俺の家族でもあるから」
「それって…」
答えを急ぐ私を見て蓮はまた笑った。
でもすぐに真面目な顔に変わり、はっきりと言葉にしてくれた。
「結婚しよう。星崎栞から東堂栞になってくれ」
「は…はい!」
嬉しくて、抱きつきたくなる。
でも相手は昨日手術を終えたばかりのひと。
グッと堪えると蓮の方が手を引いてきた。
「蓮さん?!傷にさわります!」
肩の辺りに顔が乗るような形だから傷口には触れていないだろうけど、体の上に乗るのはどうかと思う。
でも戻らせてはくれない。
「逆プロポーズされて、嬉しくてどうにかなりそうなんだ。このくらいは許してくれよ」
しっかり抱き締められると、蓮の温もりを感じられる分、薬品の匂いが鼻筋をかすめた。
ゆっくり体を離し、手術がなされた部分に視線を落とす。
「早く元気になってくださいね」
「そうだな。この状態じゃ栞のこと抱きたくても抱けなくてもどかしいよ。でも病気もするもんだ。こんな風な展開になるとは予想してなかった」
柔らかな手付きで私の髪を撫でる蓮を見上げると、そこには今まで見て来た中で一番優しい顔があった。
色々な表情を見せてくれる。
これからももっとたくさんの蓮の表情に触れていくのだろう。
「でも、病気はしないに越したことはないです。あんな風に苦しむ姿は見たくないです。だからきちんと体調管理させてくださいね」
「あぁ。頼むよ、奥さん」

