彩―IRODORI―
中間テストが終わって、市の総体に出たコウキは、惜しくも決勝で負けて、県大会には出ることが出来なかった。
コウキには悪いけど、あたしはちょっと嬉しかった。
コウキと西高に行くには、早く引退して欲しかったから。

コウキもしばらくは落ち込んでいたみたいだけど、だんだん立ち直ってきた。

「西高で甲子園行かないと」

それから、コウキは見違えるくらいに勉強に集中した。
あたしと同じ塾に入って、どんどん成績を伸ばしていった。
一緒に勉強しようって言ってたくせに、コウキは一人で黙々と勉強する。

同じ部屋にいても、コウキはあたしに見向きもしない。
時々はキスをするけど、前みたいにおしゃべりすることもない。

あたしの方が、寂しくなっていた。
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