彩―IRODORI―
蒸し暑い夏、クーラーの効いたリビングで、あたしとコウキは二人、勉強をしていた。
喉にひんやりと冷えた麦茶を流し込む。
あたしも、カリカリとシャーペンを動かしていたけど、コウキのはもっとせわしなく動いている。

「ねえ、コウキは今、合格判定どのくらい?」
「んー、今は『C』。ボーダーかなぁ」
「『C』かぁ」

C判定をもらったのなら、十分可能性があるってこと。
あたしのB判定はさらに可能性が高いということ。
C判定もあるなら、そんなに熱心にならなくてもいいじゃん、とあたしは思ってぶーとしていた。

「どうしたのアヤ」
「なんでもなーい」
「嘘。あ、欲求不満?」

そう言って、コウキはあたしに顔を近づけた。

「バカ」

あたしは顔を引っ込めた。
テーブル越しのコウキは、それ以上体を伸ばせない。

「キ、キスから何もないって…なんで?」

コウキは驚いたような目であたしを見た。
あたしは、目尻に涙が溜まっていた。
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