契約結婚はつたない恋の約束⁉︎
「はあぁっ⁉︎ ……なんで『今』なんだよっ⁉︎」
これからこの「流れ」で栞を二階の寝室に引っ張り込もうとしていた神宮寺が、驚きのあまり声を張り上げる。
「えっ、だって……おねえちゃんに言うてもええって言わはったやん?」
栞がきょとんとした顔で、こてんと首を傾げる。「ど天然記念物」が炸裂だ。
「ほな、あたしがたっくんと結婚したことをおねえちゃんにLINEで『報告』してる間、たっくんは家計のためにがんばってお仕事して。
東京へ戻るまでに、できるだけたくさん書かんとあかんえ」
栞はそそくさと神宮寺に背を向けた。
今日は金曜日なので、きっと明日は稍の派遣先の会社が休みのはずだ。
だから、積もる話があり過ぎて、少々長くなっても大丈夫だろう。ツイている。
背後で歯軋りする神宮寺を尻目に、栞はイケアの真っ赤なエプロンのポケットから、スマホを取り出した。
それから、タップを繰り返したあと、スマホを耳に当てる。
スマホからは姉を呼び出す、弾むような軽快なリズムの音が聞こえてきた……