契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「稍……おれは……」

智史は弁解しようと妻に話しかけるが、

「ああっ、()よ食べやんと、せっかくのフグが煮え過ぎてしまうえ」

土鍋を覗き込んだ栞の言葉によって遮られた。
一同は、あわててテーブルについた。
ななも稍と栞の間に置かれたベビーチェアに座らされる。

「……いただきます」

すると早速、神宮寺が鍋の中に箸を入れ、いきなり大きなとらふぐを釣り上げた。
そして、「美味(うま)いっ」と舌鼓を打ったかと思うと、また同じ大きさくらいのものを釣り上げる。

「それに……このポン酢、すんげぇ旨い」

稍が取り寄せた、旭ポン酢の力である。


……うわあぁーっ、こいつっ、鍋の中に直箸(じかばし)()けやがったぁーっ⁉︎

鉄仮面&鉄面皮の表情の下で、智史は断末魔の絶叫をしていた。

超潔癖性の智史にとって、一緒に鍋を(つつ)けるのは稍と栞(もうすぐ、ななも加わるであろうが)くらいだ。

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