能ある狼は牙を隠す
*
「羊ちゃん、おいしい?」
「うん……おいしい……」
狼谷くんに連れられて来たのは、落ち着いた雰囲気の抹茶専門店だった。
お祭り自体は夕方からだそうで、それまで時間があるから、とここへ入ったはいいんだけれど。
さっきからずっと、目の前で狼谷くんは私を凝視している。
もうそれが気まずくて気まずくて、そして恥ずかしくて耐えられない。
「あ、あの、狼谷くん、アイス溶けちゃうよ」
彼が注文したのは抹茶アイスだった。
私はそれにするかケーキにするか悩んで、結局ケーキにした。
なかなか決められない私に、狼谷くんは「どれで迷ってるの?」と尋ねてきて。
答えたら、羊ちゃんが頼まなかった方は俺が頼むから、と言って店員さんを呼んでしまった。
「うん、気にしなくていいよ。これも羊ちゃんが食べていいから。ああごめん、アイス先に食べたい?」
「うーん? えっと、そうじゃなくて」
なんだろう、この絶妙に噛み合わない会話は。
にこにこと上機嫌な狼谷くんに、私は戸惑ってしまう。
「私だけ食べてるの恥ずかしいから、狼谷くんも食べよう……? 一緒に食べたい……」
「羊ちゃん、おいしい?」
「うん……おいしい……」
狼谷くんに連れられて来たのは、落ち着いた雰囲気の抹茶専門店だった。
お祭り自体は夕方からだそうで、それまで時間があるから、とここへ入ったはいいんだけれど。
さっきからずっと、目の前で狼谷くんは私を凝視している。
もうそれが気まずくて気まずくて、そして恥ずかしくて耐えられない。
「あ、あの、狼谷くん、アイス溶けちゃうよ」
彼が注文したのは抹茶アイスだった。
私はそれにするかケーキにするか悩んで、結局ケーキにした。
なかなか決められない私に、狼谷くんは「どれで迷ってるの?」と尋ねてきて。
答えたら、羊ちゃんが頼まなかった方は俺が頼むから、と言って店員さんを呼んでしまった。
「うん、気にしなくていいよ。これも羊ちゃんが食べていいから。ああごめん、アイス先に食べたい?」
「うーん? えっと、そうじゃなくて」
なんだろう、この絶妙に噛み合わない会話は。
にこにこと上機嫌な狼谷くんに、私は戸惑ってしまう。
「私だけ食べてるの恥ずかしいから、狼谷くんも食べよう……? 一緒に食べたい……」