能ある狼は牙を隠す
全てを振り切ったように、彼がきつくきつく私を抱き締めた。
少し痛いかもしれない。でもまあ、離さないでって言ったのは私だから、別にいいや。
しばらくそうして抱き合って、どちらともなく体を離す。
交わった視線の先。引き寄せられるみたいに、唇を重ねた。
「羊ちゃん……好き。好き、大好き……」
息継ぎの合間、愛しさを隠さず彼が囁く。
甘くて、熱くて、気持ちよくて、幸せで。彼といればこんなにきらめいた日々が続くんだと思うと、眩暈がするほど嬉しかった。
ねえ玄くん、私気付いてたよ。玄くんが重いのもおかしいのも、全部分かってたよ。
彼は私のことをずっと大事に囲っていたけれど、その柵はいつだって飛び越えられる高さだった。私が本当に嫌になったら逃げられるように、鍵はかけなかったんだ。
本当におかしくなっちゃったのは私かもしれない。
だって、逃げられないようにもっと頑丈に囲ってよって、思っちゃったんだもん。
私はそんな不器用で優しい玄くんから、もう一生逃げられないんだろう。たとえ柵なんてなくたって、鍵なんてかかっていなくたって。私の心はとっくに彼に囚われていたから。
「羊ちゃん、愛してる」