拾った彼女が叫ぶから

想い

 声に涙が乗って震える。
 伝えなきゃと思うのに、焦って上手く言葉にならなかった。マリアは結局またこれまでみたいに突っかかってしまった自分を呪った。
 頭が真っ白になって、でもまだこれじゃ伝えきれていないと半ば絶望的な気分になる。
 ルーファスが滲んだ視界の中で驚いているのがわかる。
 だから震える足を叱咤して、マリアはつたない言葉で続ける。もう、取り繕うことなんてできないのだから全て吐き出すしかないのだ。

「あんたに何かあったときに傍にいられないなんて嫌」

 頬が熱い。二人の視線がじりじりと焦げそうに痛くて今すぐ逃げ出したくなる。
 ──でも、逃げちゃダメだ、今度こそ。押さえ込んできた気持ちを、ちゃんと伝えなきゃ。

「一言の説明もなく、勝手に離れて行って……。せめてパメラ様との結婚のこと、はっきり言って欲しかった。私、あんたの言う通りに連絡を待ってたの。待ってたのに……! あんたがちゃんと説明してくれなきゃ、終われないじゃない!」
「マリア……?」

 ルーファスが怪訝そうに眉を寄せる。それでもマリアは勢いに任せて続けた。

「あんたが隠してることも言って欲しいし、何か抱えているなら私に吐き出してって言ったでしょう! どうして勝手に行っちゃうのよ。そんなに私は軽い存在だった? あんたは私が好きなんじゃなかったの……?」

 興奮して息が上がるけど、もう止まれない。

「あんたが私を笑わなかったみたいに、私だってあんたのことを笑わないしあんたの味方になる。あんたのことはもっと知りたいし、理解したい。そりゃあ何もかも理解するのは無理だろうけど、それでもあんたのそばにいたいしあんたが笑っていられるなら何だってする。そう思ってたし、今も思ってる」
「マリア」
「憎まれ口だって叩かないように気をつけるし、おしとやかにしろっていうならそうしようって思ってた。あんたの行くところにはどこまでだって付いて行くし、あんたに相応しくなれるようにできる限り努力するし、ちゃんと押さえ込まないようにあんたにも伝えるようにしようって、やっと思うようになったのに」
「マリアの憎まれ口も好きですよ」
「だからそういうことじゃなくて……!」

 見守るルーファスの目が柔らかいのに、どんどん頭の中が沸騰していってもはや何を言いたいんだかわからなくなってくる。
 ──ちゃんと伝わってる?
 
「あんたが、好きなのっ!」

 マリアは真っ赤な顔をそのままに叫んだ。

「ルーファスがっ、好きなの……!」

 ルーファスの目が見開かれ、琥珀色の虹彩が一回り大きくなる。身動きもできずにその目に見入っていると、眼差しは次第に柔らかくなっていった。まるで溶けていくように。頬もゆっくりと緩んでいった。
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