Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「ケイさん、もう一度、やってみますね! 見ててください!」
 なんの含みもないこの笑顔の方が、今の俺には心地いい。

 その後も俺が面白がって邪魔していたら、軽く華月に怒られた。頬を膨らませた華月は、美人だがやっぱりかわいい。
 どうやっても俺に勝てなかった華月はむきになってしまい、ビリヤードの後にボーリングや卓球まで付き合わされる羽目になった。

  ☆

「負けず嫌いなんだね」
 俺たちは、プレイパークを出て街を歩いていた。夜中をとっくに過ぎても、この街の人波は途切れることがない。むしろ増えているくらいだ。
 浮かれた人ごみの中で、なるべく華月から離れないように歩く。

「もう少ししとやかに、と、母にはよく怒られるんです。なかなか、母の言う淑女にはなれません」
 華月は、恥ずかしそうに笑った。
 おとなしそうに見えても、そこら辺の男をひっかけようとする子だもんなあ。それでいて、スれているわけじゃないときた。
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