Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「なのに、親の言うままに結婚はするんだ」
「それは……仕方ありませんわ。私がお嫁に行かないと、父も困りますし……」
「え?」
「あ、いえ、なんでもありません。それは、いいんです。私が納得したことですから」
 華月はあわてて言葉を濁した。

「華月は、何かやりたいことがあったの?」
 どことなくその口調が気になって聞くと、わずかにためらった後、華月はポツリと言った。

「私、本当は産婦人科医になりたいんです」
「は? 医者? 華月が?」
「はい。おかしいですか?」
「いや。ただ、びっくりしただけ。しかも、産婦人科なんだ」

「第一希望は、産婦人科です。医師になることができれば、どのような科でも精一杯がんばりますけれど。でも、そんな必要はない、と両親に反対されて……残念ですが、医大に進学することは叶わないようです」
「ふうん」

 その後華月は、せきがきったように話し出した。
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