Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「お前は……その男を、それほどに想っているのか……?」
「はい」 
 華月の目に涙が浮かんだが、それがこぼれることはなかった。
「心に思い浮かべれば、会いたくて恋しくて……胸が痛みます。恋とは、そういうものなのでしょう? たとえその望みが二度と叶うことのないものだとしても」
「華月……」

「お願いです」
 華月は、畳に着くほどに深々と頭を下げた。

「このままでは、夫となる方まで不幸にしてしまいます。私さえいなければ、今度こそ岡崎様も幸せな良縁にめぐりあえましょう。私のわがままで皆様にご迷惑をおかけすること、十二分に承知しておりますが……このお話、どうか、なかったことにしてください」

「それは、困るな」 

 突然、それまでとは別の声がその場に響いた。
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