Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
 そんな華月の顔を、圭介はいたずらっぽい笑顔でのぞきこむ。

「総合病院の跡取り息子で、将来有望なイケメン医師。こんな優良物件、逃す手はないよ? 今のうちに、俺を捕まえておきなよ。でないと、もしかしたらまたどこかで、チンピラに絡まれている女の子を俺が助けないとも限らないし」
「それは、脅しですの?」

「俺自身を猛烈にアピールしているだけだよ。あとは、そうだな、デートしたいという君の要望を全力で叶えてあげる」
「甘い言葉を信じると痛い目にあうと、学習したばかりですわ」
「大変、結構。ああ、医大対策も完璧だよ。受験から国試まで、手とり足取り教えてあげる。なにせ成績優秀な現役医師だからね」
「……私が断るなんて、思ってもいらっしゃらないでしょう」
「万が一断られても、恨んだりしないよ」
 それは嘘だ。断った途端、ちくちくといじめてくるに違いない。

 華月は、圭介にわからないように小さく笑いをかみ殺す。
 ああ言えばこう言う。まったく口の減らない男だ。
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