Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
 ただ時間だけを無意味に重ねてきたと圭介は言っていた。けれど、高校や医大をほぼトップの成績で圭介が卒業したと、先ほど一之瀬が話していたことを華月は思い出す。

 自分も密かに医大を目指していた華月には、縁談用にいくらか誇張された話だとしても、それがどれほど大変なことなのかよくわかる。親に決められた道を仕方なく進んできたというだけで、得られる結果ではない。
 それはきっと、圭介自身も、望んだ未来。

 足を止めて、無表情のまま肩越しに華月を見つめていた圭介は、何も言わずにまた前を向いて歩き出す。けれど華月は、その耳がほんのりと赤く染まっていることに気づいてしまった。

 これだからとかなんとかぶつぶつと華月に聞きとれない声で呟いていた圭介が、前を向いたまま言った。
「……華月」
「はい」
「覚悟しておいてよ。これから、いろいろと」
 つないだ手に力がこめられる。その手を、きゅ、と握り返して、華月はついに幸せそうに微笑んだ。

「はい」








Fin
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