最後の男(ひと)
士郎と別れた後、長くは続かなかったものの恋人と呼べる存在はいたし、再会してからも新しい出会いはそれなりにある。大人の男女として、一夜限りの遊びの恋を楽しむ夜だってある。それでも、この歳になれば何がきっかけで恋愛に発展するか分からないことを知っているから、新しい出会いがある度に、これが最後の恋になるかもしれないと密かに期待してしまう。

士郎は、他の男が残したキスマークを見落とすはずはないのに、何も言ったりしない。私をセカンド扱いしている自分には何も言う権利はないと弁えているのか、僅かな嫉妬さえ見せたりしないのは、割り切った関係だと位置付けているからなのだろう。

それでいい。士郎には、そう思っていてもらわないと困る。
当て付けで他の男と寝ている訳ではないのだから。

いい男と出会ったら、どんな風に女を抱くのか試してみたくなるのが女の性だと思う。とはいえ、一人の男に操を捧げることに疑問を持ち始めたのは、士郎との別れがきっかけだった。

学生時代、士郎と暇を持て余してはお互いの体を探求することに明け暮れていたから、3年も付き合えば、お互いのいいところは分かっている。そういう、慣れたところが面倒くさくなくていいし、セフレと割り切っているからこそ、大胆に快楽だけを追求できる。そこに愛だとか恋といったものが入ると、羞恥心等が混ざり合って、純粋に快感だけを追うことができなくなる。

士郎と再会して、初めて体を重ねた夜。あまりの彼の変わらなさに少し驚いた。2年のブランクがあるとは思えないほど、付き合っていた当時の愛撫を再現したから。

士郎の記憶力がいいのか、それとも、何人かの男が私を通過しても体が変わらずにいたのかは分からない。一度で終わるのは惜しいと思っていたころ、ちょうど良いタイミングで士郎の二度目の訪問があった。

そこからは、現を抜かして転がり落ちるように現在も続いている。

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