暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



掃除は割と得意なのでいいのだが、よりにもよって……………なぜこの部屋に当たってしまったのか。


まるで元使っていた私に対して『使ってたのだからこの部屋を掃除しろ』とでもいうかのようだ。



「ここに花瓶を飾ってたのよね……」


窓際の机の上をそう呟いて手で触る。


まるで、ここにいた事が昨日の出来事かのようだ。



「………………………………っよし!やっと終わり!」


気づけば夕方で時刻は17時半になっていた。


昼から始めたと考えて、およそ5時間も経過している。



「結構これだけで時間を使ってしまったわね……」 


道具を片付けながら部屋から出ようとしたとき、

いきなり部屋のドアが開いた。


___ガチャ。


「お妃様………っ!?…………………いや、違うか」


なんと中へ入ってきたのはサニーだった。


「申し訳ございませんでした……。一瞬アニ様かと思いまして…」


久しぶりに会うサニーの顔色は宜しくなく、疲れた表情に見えた。


「………いえ、大丈夫です。お妃様に仕えていた方ですね?」


「…………はい。ここへ来たらお妃様に会えるような気がして参りましたが、やはり会えない運命なのですかね。あの日からどこへ行かれたのかと不安で仕方ないのです」


私のことなど忘れて構わないのに……………サニー達はまだ私のことを気にかけているというのね……。



「リリアンなんて仕事になったもんじゃないし………ダリアだって……………って、そんな話をしても困りますよね」


「気になさらないで下さい。私で良ければ話を聞きますよ?」


…………………………まぁ本人だし、それにリリアン達が今どうなっているのか知りたいところだ。



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