暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



「父さんと同じだな」


そう苦笑しつつ私の顔を見つめる父の顔は、何故だか切なく見えた。


そういえば、父は私の顔を見るたびにこのような表情を度々見せる。


その理由が何なのか私にはよく分からなかったが、今はただ何も言わず父を送り出した方が良いと自分の頭で悟った。


「じゃ、行ってくる」


私に背を向けて手をヒラヒラさせながら、父は家から出て行った。


その後は只々暇でやる事がなかった為、冷蔵庫にある材料で皆の分のご飯を作り、起きるのを待っていた。





_____午前6時。


朝ご飯を作ろうと起きてきた母に続き、あくびをしつつ、眠たそうな姉と弟がリビングにやってきた。


「アニーナが作ってくれたの!?助かるわ~!!」

母はそんな私を嬉しそうに褒めてくれた。

「アニ、料理の腕また上がった?私より上手くなるのやめてよね~」


姉は少し不満げだったが、最近料理を頑張りだしたと母からの手紙で私は知っており、何だか可笑しく感じてしまった。


「ほら、ちゃんと目を開けて食べなさい!」


朝から注意されて弟は少し不機嫌そうだったが、母からそう言われるとあくび混じりに食のペースを上げた。


「ご飯食べたら早く支度しなさい~!遅れるわよ」

「えー!もうこんな時間!?やっばーい!!」

忘れていたが今日は平日であって、姉と弟は各自学校がある。


私も本来なら高校生のはずなのだが、使用人として仕えることを決めからには仕方がない。


普通の子でなくとも私は宮殿で平凡に過ごせているから、それなりに満足しているし、足らない学力は宮殿の図書館にて補えるからそれなりに私は幸せだ。



「俺、今日学校行かねぇ」


あくびをしながらそう言うのは弟のグラント。

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