暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「確かに普通の女はこの様な服を着れぬだろう。しかし、そなたは余が招いた客だ。それだけでもかなりの価値がある」
「しかし____…………」
「黙れ」
ズン………と体ごと地面に叩き潰されそうなほどその声は低くて冷たく
一瞬にして私の顔が青ざめていくのが分かった。
「話はそれだけか?用事が無ければ、出ていくが良い」
そう冷たく言い張らうと、再び資料に目を落とす。
(一瞬だけ微笑んでいたように見えたから、つい調子乗ってしまった………)
ここでは陛下が法の全てだ。
陛下が気に食わなければ使用人でも、例え客人だとしてもきっと殺すだろう。
……………本当はこの待遇を止めてもらえるように言いに来たのだが、これ以上口を出し、気を損ねても危険だ。
不服ではあるが、ここにいる限り大人しくしていることが助かる唯一の手段なのかもしれない。
「…………………失礼致します」
頭を下げると私は静かに部屋から出たが、
陛下は部屋から出て行く私に見向きもせずに、資料をずっと見ていた_______。