彼は私の全てだった
シュウは女の子にモテた。

明るく社交的で誰にでも優しくて
勉強もスポーツも出来た。

中には私がシュウと仲良くしてたのが気に入らない子もいて
陰口を叩かれたり、嫌がらせされたりするようになった。

私はこれ以上いじめられるのが怖くて
シュウと少し距離を置くようになった。

「柿沢、最近元気ないな?

もしかして俺…何か気に触るようなことした?」

私はやりきれない気持ちだった。

シュウは何も悪くないのに
私の態度はシュウを不快な気持ちにさせていた。

私はシュウと話す必要があると思って
シュウの家の近くまでシュウに逢いに行った。

「え?柿沢?

どうしたの?こんなとこまで来て。」

シュウは待ち伏せしてた私に戸惑ってたけど

「良かったらあがって茶でも飲んでって。」

と優しく迎え入れてくれた。

「あら、シュウの彼女?」

「ばっ、違げぇよ。

隣の席の柿沢さん。」

私は焦って頭を下げた。

「柿沢です!

突然お邪魔して申し訳ありません。」

シュウのお母さんはすごく綺麗だった。

「ゆっくりして行って。
シュウが女の子連れてくるなんてはじめてじゃない?

わたし、これから仕事なんだけどゆっくりしてって。

シュウ、悪さしないでよ。」

そしてシュウと私を交互に見て優しそうに笑った。

花柄のエプロンが似合う家庭的なお母さんて感じではなかったけど
真っ赤な口紅の似合ういい匂いのする素敵なお母さんだった。






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