彼は私の全てだった
be together…
シュウは実家から戻った私に言った。

「帰って来なかったからどうしようかと思った。」

そう言って私を抱きしめた。

この状態がいつまで続くかわからないけど
今はとても幸せで
私はシュウにお母さんの話をする機会を失った。

今の時間を壊したくない。

だけど…この話をいつまでもシュウにしないワケにもいかない。

しばらく葛藤が続いたが
結局、私はシュウがなるべく機嫌のいい日を選んで
話すことにした。

「シュウはどうしてあの時…私に黙って転校したの?」

「何?今さら…」

「私のこと嫌になった?

それとも…自分のことが嫌になったの?」

シュウは私を抱く手を止めて
しばらく黙っていた。

そして私を抱きしめて言った。

「誰も愛したくないし…愛されたくないと思った。」

その言葉を聞いた時、思わず泣いてしまった。

シュウはあの時、すごく苦しかったんだろう。

私には想像できないくらい絶望してしたんだと思ったら涙が止まらなくなった。

「ごめん…傷ついたよな?」

私の涙は自分のあの時の気持ちを振り返って流したワケじゃないのに
シュウはそう思ったんだろう。

「シュウのお母さん…シュウはお母さんが…亡くなった時…どう思った?」

「え?」

こんなこと聞かなければよかったんだけど…
私はどうしても知りたかった。


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