彼は私の全てだった
「実はシュウちゃんから預かったモノがあるの。」

私は焦った。

まさか彩未がドラッグを預かってるのではないかと思ったのだ。

「あの…何預かったの?」

彩未に恐る恐る聞いてみる。

「ただの鍵なんだけど…何だろう?

駅のロッカーって感じでもないし…」

私はその中にドラッグが入ってるのだと勝手に思った。

でもそれが何処の鍵なのか見当もつかなければ
確かめる方法もなかった。

私はシュウが私じゃなくて彩未にそれを預けた事がショックだった。

「シュウは元気だった?」

「柿沢さん、今、そんな事言ってる場合じゃないでしょ?

私なんか怖くて…これ警察に届けた方がいいかな?」

彩未はもうシュウのことなど吹っ切ってしまったのだろうか?

私だけがいつまでもあの場所で立ち止まったままなのだろうか?

「その鍵…私が預かろうか?」

彩未はしばらく答えなかったが、
少し経って驚く事を口にした。

「本当の事を言うと…これ柿沢さんに渡して欲しいって預かったの。」

「え?」

「共通の知り合いが私しか居なかったからだろうけど…
私に預けるなんてシュウも酷い人だよね。」

何で私に直接逢いに来なかったんだろう?

私はそれが悲しくてなんとも言えない気持ちになった。

それを聞いた時、多分中に入ってるものはドラッグではないと思った。

次の日彩未に会って、私はその鍵を受け取った。
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