彼は私の全てだった

私の首にかかっていた鍵は私たちの高校の近くにあったトランクルームの鍵だった。

そこでシュウは現金とこれからの旅に必要な物を詰め込んだバッグを持って
また扉を閉めてその鍵を私の首にかけた。

「もし、オレと離れるような事があったら
もう一度ここに来てあの中を見て。」

私は他に何が入ってるのかわからなかったが
今はシュウと逃げる事で精一杯だった。

だけど行方不明になった私を中村さんが必死に探していた。

私がシュウに羽交い締めにされて暗闇に引き込まれる姿は店の駐車場に設置された防犯カメラに映っていた。

シュウは指名手配され、
私たちは逃げる道をどんどん失っていく気がした。

私たちは何とか場末のラブホテルに部屋を取って
やっと休む事が出来た。

「ミチル…やっぱりお前とはここで別れよう。」

とシュウは言ったけど
私はもう引き返せなかった。

「嫌だよ。もう二度とシュウと離れたく無い。」

シュウは私を抱きしめて
私たちはまた深く愛し合う。

そして私はシュウに言った。

「お願い。私を連れて行って。」

シュウは私の手首と自分の手首をスマートフォンの真っ赤な充電コードで結んだ。

そして私の首に手をかけ
私たちは一つになる。

「お願い。殺して…」

シュウはそう言い残した私にキスをして

「ミチル…愛してる…

ごめん。好きになって…

ずっとお前を1人にして…」

と泣いた。

シュウの首にかける手は力を増していった。

そして私は快楽の中で意識を失い動けなくなった。

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