彼は私の全てだった
瀧川はシュウの抱えてきた傷を思って胸が痛くなった。

たった16だったシュウが背負うには耐え難い過去だったのだろう。

人を愛することを諦め、
それでも最後までたった1人諦める事が出来なかったミチルへの想いを何年も抱えて
シュウは大人になり
ミチルのことを遠くで見守り、
そして同じ会社にまで就職する。

しかしミチルと再会すると高校の時に起こった母親の心中事件を思い出して小泉柊は情緒不安定になる。

ミチルと愛し合うとなぜかミチルと心中をしたくなる衝動を抑えられず
このままではミチルを本当に殺しかねないとミチルと再び別れることを決める。

その後、偶然会って意気投合した男に頼まれて荷物を預かり、言われるままそれをある場所に届けてしまったことで犯罪に加担することになる。

最初はクラブに来る若者相手にドラッグを売っていたが
ある日知り合った家庭のある女に自分の母の姿を重ねて彼女にドラッグを服用させ中毒にしていく。

そしてドラッグがやめられなくなった頃に
到底払い続ける事ができない金額に跳ね上げる。

それでもクスリに頼るしかない女に男を紹介して
身体の関係を強要し、家庭を壊すと脅して
仕方なくその彼女はシュウの言いなりになっていった。

それからシュウは彼女の知り合いを紹介してもらい、
その輪を拡げて
家庭のある女ばかりを狙ってドラッグを売り、身体を売らせるように仕向け、次々と女たちを地に堕としていく。

しかしある女が客の男に酷い暴行を受け
病院に運ばれた事で
小泉柊の悪事が表面化することになった。

その間もシュウのミチルへの出せない手紙は綴られていた。

犯罪を繰り返している男とは別の姿がそこにあった。
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