タイトル7



 車が人を撥ねる音あの、鈍い音っていうのは職業柄何度も聞いたがどうしても慣れるという事はない。
【午後十一時二十八分、車に撥ねられ出血多量で死亡。監視センターよりこの魂はタイトル7の異動が予想される。厳重注意】

改めて魂記録を見るが、俺たち死神の仕事はこうして魂を回収し無事天国、または地獄に送り届けることだがもう一つ重要な役割がある。
それは、現世界に潜む害獣共から魂を守るためだ
……いやむしろ本業はその害獣を退治する事になっているかもしれない。
害獣共は現世界に幾度となく存在し、それは普通の人間では見ることはできない
見ることができるのは死神や、死者。同じくこの世に存在しなくなった者だけが見ることができ、そして襲われることがあるのだ。
連中は、生き物の魂を食らって何とか生存しておりもちろん人も例外ではない
ここ最近も活発になってきたが害獣共は特に人間の魂を好物としている。
何処がうまいのかは知らないがとにかく連中は人間の魂を極端に襲う傾向がある。
しかし、もっと厄介なのはこの害獣共はタイトル7行きの魂を特に好む。
理由はまだ解明はされていないが、今のところ九十%の確率で出現しているらしい。

 


  「おい! 大丈夫か?! 」



 ___時間だ。





俺は、気合いを入れて白い横断歩道の上で血を流している高校生の下へ行った。
今のところ周りは車も少なく、撥ねてしまった男はあたふたしながら手汗まみれの携帯電話で警察に連絡を入れている。
閑静とした道路を見渡すが、見えるのはぽつぽつとある街灯そしてこの二人だけだった。

「……まさか来ねえのか? 」



次の瞬間、車の二十メートル先に黒いモヤがあるのが見えた。
___やってきたな。


俺と害獣の赤く閃光する目が合う。
二メートルほどの巨体が口を開け、鋭い八重歯が女子高生の体から小さく光る魂に向かってものすごいスピードで襲いかかってくる。
それと同時に、鞘から短刀を抜き出した俺は、奴に向かって走りだした。
短刀と歯がキンと金属のぶつかったような音があたりに響き渡る。
戦闘はあまり好きではないが、戦闘ならではのこの熱さは嫌いじゃない。
俺がふっと口角がらしくもなく少し上がると、害獣は八重歯を短刀に向かって、プレスするような強さで押してくるが片腕すべてを使い体重を八重歯にかけると、三メートル程下がった。


「まさか、これで終わりじゃないよなあ」


俺は追い打ちをかけるようにして短刀を振り続けると徐々に自分のペースになっていき害獣が押される番になった。
1,2,3とリズムを刻むようにして斬りつけていくと、後ろに下がっていく害獣に向かって不意打ちに短刀の柄で小さく突くと、害獣は後ろによろける

隙というのは、命取りに繋がる。それは過去何年も死神をやってからつくづく感じる事だが、逆を捉えればその隙をまた突くことも、命を取りにならない方法の一つである。俺は躊躇なく、ほんの隙を短刀で思いっきり刺すと音もなく害獣は粉々になって消えた。







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