* KING+1 *
用意が時間以内に出来た私は、鏡で自分で選んだコーデを見てふと思う。


「先輩ならこうかな?」


何だかんだ言いながら、先輩コーデを再現している…つくづく先輩色に染まっている自分が憎らしい。


「用意出来たら行こうか?」


部屋の戸締まりをした後、何の躊躇いもなく 私の左手は副社長の手の中に収まり 指を絡められる。


あれ?何かいつもと違うのは気のせいではない。副社長の目がやたらと熱い?


「さっきのあれ何?」


う~ん、さっきの?クエスチョンマークが頭に浮かんで無言の私に


「えっ、まさか無自覚であれ?杏果ヤバ過ぎて、俺がやられる…。ねぇどうしょうか?」


…と、訳がわらない質問をされてもこっちが困るだけだし。もう普通にスルーする事に徹する。


「副社長、今日私は忙しいっていうのは、何かあるんですか?」


「ああ、すっかり飛びそうなスケジュールだった。杏果、今日は飛び入り出来るイベントに参加するから 楽しみにしていてよ。」


訳のわからない説明をされ、更に困る。


「大丈夫ですか?私で務まりますか?」


「ああ 杏果なら大丈夫だよ。君はその、贔屓目に見なくても────誰よりも可愛いから///」


道行く人が 極上イケメンオーラ満載で笑う副社長を二度見しながら通り過ぎる中、私は隣で歩くの嫌だと思いながら、しかも手を繋ぐの止めて欲しいと願っていた。


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