狐の声がきこえる
「僕を使ってほしいんだ」
どこか切迫した響きに、それ以上否を唱えられず、貸切バスに乗りこむ白彦を見送った。
その頑なな背中に、まただ、という気分になった。白彦が、こうして自分のことより皐月を優先するのは、今が初めてじゃない。それをなぜ、と問うのも初めてではない気がするのに、どうしてもなぜと口にするのはためらわれた。
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