りせい君の理性が危うい瞬間






私の唇をフニフニと触って(もてあそ)んだ利生君は、その人差し指を下に向かわせ、こんどは私の(あご)をクイッと持ち上げる。




「さあ、どうする?羽子」


「……っ」


「そろそろ俺に、身も心も預けちゃえば……?
 そうすれば、どれほど楽か知ってるくせに」


「……」



そんなこと、分かってる。


利生君に従いさえすれば、無駄に苦しまなくて済むことくらい、私だってちゃんと分かってる。



だけど私は……。


その……人を惑わすような利生君の外見にも

人を狂わせようとする、利生君の言葉にも。


絶対に……屈したくない。



だから。





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