天国への橋
それから十二年。




俺は、自分の部屋でその頃の写真を見ている。




思い出している。







ずっと親父が、そばにいてくれると信じていた頃を。


親父が大好きだった、あの頃を……。










一階では、葬式の準備が進められているらしく、時々大きな物音が振動として響いてくる。







母さんもお人よしだよな。

葬式まで世話するなんてさ。








ため息を吐き出し、俺は再び写真に視線を落とした。







記憶の中では若い親父も、すっかり歳をとっていた。


顔には深いシワが刻まれ、髪も白髪が目立っていた。






そして………冷たかった……。










親父は虹を見て、自分は天国へは行けないと呟いていた。


何をしても行けないと。






その意味が、今ならよくわかる。





そして、親父の瞳が潤んでいた訳も、名残惜しそうに俺を見つめていた訳も。


ためらう様に、何度もノブに手を伸ばしていた訳も。


なぜ振り向かなかったのかという訳も……。








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