天国への橋
親父は泣いていたんだ。


心残りがあったんだ。






それは、写真の中の小さな俺……。









写真の中の親父は、笑っている。


愛おしそうに、小さな俺を抱きしめている。







これが俺への、親父の真実の心。










親父は俺を忘れてなどいなかった。



こんな古い写真を、ボロボロになるまで大事に持ち歩いていたんだ。





自分が背負った罪の分、言い出せなかった正直な気持ち………。









「馬鹿だな、俺だっていつまでもガキじゃないのに。こんなチビの時の写真しか持っていなかったなんてさ」







俺は、唇を噛み締めた。



写真を持つ手が、小刻みに震え出す。









……何あっけなく死んでんだよ。

母さんが、どれだけ苦労したかわかってんのかよ?




母さんを泣かせて出て行って、帰って来てまで泣かせて。



そんな権利、あんたにあんのかよ?





死んでちゃ、何も言えないじゃないか。





俺、あんたに言ってやりたい事、たくさんあったんだ。








.
< 19 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop