次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
テガナ村にはそういった存在はいなかったが、旅人たちから何度も話は聞いているため、その風貌はなんとなく知っているつもりだった。
しかし目の前に現れた本物はリリアが想像していたよりもずっと陰気で、まるでこの世のものではないかのような気味の悪さを感じた。
「彼はボンダナの弟子だという噂がありますがそれが真実かも、実際に神秘的な才能を持っているかどうかすら怪しいところだと俺は思っています」
「ボンダナの弟子?」
記憶を辿るように険しい眼差しで遠くを見つめているセドマの横で、アレフがため息交じりで話を続ける。
「エルシリア様はボンダナ導師のことを目の敵にしていまして」
リリアはボンダナという聞き覚えのある名前に視線を上げる。
旅人が呪術師の話をする時、決まってその老婆の名を口にした。
ちょっと変わったところもあるがその力は本物で、多くの人々を救い、また希望ともなっているのだと。
そして、未来のアシュヴィ王の花嫁となる娘の予言を出したのもボンダナだと、リリアは記憶している。
ボンダナのことを神聖な空気を纏った人物に違いないと思い込んでいたが、同じ呪術師のオーブリーを見てしまった今、そうではないかもとしれないという気持ちが膨らんでいく。