次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「王様に心酔されていることも、時折厳しい言葉をかけられることも癪に障るようでして、五年ほど前からボンダナ導師を老いぼれ呼ばわりし始め、これからの時代を担うのは彼だと、ああして呪術師を連れて歩いていらっしゃるのです」
続けてアレフは、呆れかえった顔で一言付け加える。
「彼が時代を担うような存在だなんて、俺にはまったく思えませんけどね」
リリアもそれに近いものを感じていた。
よりよい未来を引き寄せ、多くの民を幸せへと導くために、ボンダナは予言をするのだと旅人から聞いたことがある。
オーブリーがどれほど才能に溢れていようとも、先ほどのように初対面の相手へと一方的に怒りをぶつけてくるような気性の持ち主であるというのなら、皆に敬われ慕われる存在になどなれるはずがない。
玄関前でセドマが足を止め、リリアへと振り返った。
しばらくは王妃とオーブリーに出くわしたくないとぼんやり考えていたリリアは、セドマにぶつかりそうになり、慌てて急停止する。
「リリア、オルキス様に迷惑をかけないように」
「うん。気をつける」
素直な返事に微かな笑みを浮かべ、セドマは掴んでいたリリアの手を離すと、今度はアレフへと身体を向け、頭を下げた。