次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

ありがとうと紅茶を一口飲んでから、オルキスは短く息を吐く。


「分かった。けどボンダナも、素直に従っていればそろそろ城に着くころでは?」


マルセロはリリアのカップへと紅茶を注ぎ終えると、ゆるりと首を横に振った。


「ボンダナの元へ赴いた使いの者が、先ほど一人で帰ってきました。留守だった様です。書き置きは残してきたようですが、導師が城を訪れるのはいつになることやら」

「そうか……俺もなるべく早くボンダナと話がしたい。来ないようなら、こちらから行くことにしよう」


考えを新たにするかのようにオルキスが呟いた時、椅子を抱えて歩み寄ってきた侍女が、複雑な面持ちで「失礼します」と声をかけてきた。

三人からの驚きと不思議に満ちた視線に涙目になりながらも、彼女はオルキスとリリアの間に椅子を置く。


「オルキス様は誰の同席も許可していない」


厳しさを含んだ声でマルセロから注意されると、女性はびくりと体を竦めて「それが……」と背後を振り返り見た。


「わたしと話したいと言ったのが聞こえたぞ? もちろん歓迎してくれるのだろう?」


女性の後ろから進み出てきた老婆を見て、リリアの鼓動がトクリと跳ねた。


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