次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

隣国の王から招待を受け向かっている最中、山賊からの奇襲を受けたことで、アシュヴィ王は窮地に立たされることとなる。

護衛たちは次々と倒され、圧倒的不利な状況へと陥ってしまったのだが、それを打破したのがセドマだった。

セドマの力が状況を好転させ、見事、アシュヴィ王を守り抜くことが出来たのだ……と、そんな話をリリアは先日アレフから鼻息荒く聞かされたのだ。

リリアは「脚色しすぎでしょ?」と笑ってしまったのだが、若い騎士たちからの想像以上のセドマの慕われっぷりを目にしてしまうと、大げさな作り話というわけではないのかも気付かされる。

騎士団員のひとりとしてずいぶん前からそこにいたかのように、すっかりその場に馴染んでいるセドマを見て、リリアはほんの少しの寂しさを覚えた。

きっともうテガナ村には戻らず、このままモルセンヌで生活していくことになるだろうと、そんな予感を抱かずにはいられなかった。

しかしその寂しさは決して足かせになるようなものではなく、前向きなものである。

リリアの目にもセドマがセドマらしくいられる場所はここであるように見えていたし、リリア自身も自分に足りないことを必死に補っている段階ではあれど、愛しいと思えるオルキスの傍らが自分の居場所となるように出来ることから頑張っていこうと、気力だけは絶えず湧いてくるのだ。


< 174 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop