次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「俺がリリアを手放すつもりがないことを悟ったから、セドマも腹を決め、この町で暮らすことに決めたのだろう」
独り言のように考えを述べた後、自分を見上げたリリアへとオルキスは笑いかけた。
「もう少し落ち着いたら、テガナ村に報告も兼ねて挨拶をしに行こう。忘れるなよ」
最後はからかうように笑みを深めて、オルキスはリリアのおでこを指先で軽く押す。
それは本当に軽い力だったというのに、リリアは顔を真っ赤にさせながら、よろりと大きく一歩後退した。
「あっ! オルキス様!」
勢いよく立ち上がり走り寄ってくるアレフの後ろから、セドマも口元に笑みを湛えてゆっくり近づいてくる。
「セドマさんひどいんですよ! 手加減してくれないから、俺の面子が丸つぶれで」
「面子? お前が不甲斐ないのだから、逆に叩き潰してもらえて良かったじゃないか」
「オルキス様まで、そんな!」
オルキスに冷笑され愕然とするアレフの仕草が滑稽で、リリアは堪えきれないまま、くすくすと笑う。
「元気そうだな」
眼尻に滲んだ涙を指先で拭っているリリアの隣りでセドマは足を止め、安堵しているかのようにしみじみと声をかけた。