次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

快く引き受けてくれたマルセロへと笑いかけたのち、ボンダナは視線を籠へと落とし、小さなため息を吐いた。



ボンダナと別れ、城内へと戻るべく回廊を進んでいたオルキスたち三人に、後ろから駆け寄ってきたアレフが合流する。

先程のセドマとの練習試合の話に花を咲かせていると、オルキスがピクリと反応し、機敏にリリアの前へと一歩進み出た。


「オルキス様!」


リリアは突然のオルキスの行動を不思議に思うが、続けて聞こえてきたオルキスを呼ぶ声音に全てを理解し、息を飲む。


「言ったはずだが、城から出て行けと」


おぼつかない足取りで近づいてきていたユリエルへ、オルキスが心を凍らせてしまうくらい冷たく言い放つ。

ユリエルはオルキスまであと数歩の所で、崩れ落ちた。


「私は幼いころからあなたの妻になることだけを夢見ていました。ふさわしい女性になるための努力だって重ねてきました。あなたの前に現れたどの女性よりも、わたくしが一番アシュヴィ王の妃の器だと、今でも強く思っております……だからお願いです。出て行けとだけは仰らないで」


通路にひれ伏すユリエルの姿にリリアは言葉を失うが、オルキスは一切表情を変えなかった。


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