次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
ボンダナはきらりと目を輝かせ、したり顔をする。
「なんだ焼きもちでもやいてるのか」
「違う」
「嫉妬に苛まれれば普通醜い顔になると言うのに、オルキスはそういう時でも麗しい。罪な男だ」
「だから違うと言っている!」
心が和んだことが分かるほど柔らかな笑顔を浮かべたリリアを見て、ボンダナは懐かしそうに目を細めた。
「お前さんは本当にソラナと瓜二つだな」
「ボンダナ様も、お母……ソラナさんのことを知っていらっしゃるんですね」
「あぁ。よーく知っておる」
お母さんと言いそうになるのをぐっと堪えて言い直したリリアに、ボンダナは瞳を寂しげに揺らした。しかしすぐに大きく息を吸い込み、顔を城へと向ける。
「良い匂いがするな。悪いがわたしにも食事を分けてもらえぬか?」
オルキスはボンダナからの頼みにすぐに頷き返し、マルセロへと目配せする。
「かしこまりました。家の方に届けさせます」
「いや。わたしはしばらく庭園の奥にある物置き小屋で寝泊まりさせてもらうことにした。だからそこに持ってきておくれ」
「それなら私があとで直接お持ちいたしましょう。若いものに任せたら、途中で迷って冷めてしまいますからね」
「よろしく頼んだよ」