惚れ薬
☆☆☆

宏樹が教室へ戻って来たのはそれから30分後のことだった。


教室から生徒たちが少なくなった時、遼太郎が宏樹の飲み物に薬を混入させている。


あたしたちは3人で会話をしながらも宏樹の動向を伺っていた。


席に座り、図書室で借りて来たであろう小説を読み始めている。


本当に本が大好きみたいだ。


見た目も地味だし、趣味も地味、そんな宏樹がお金持ちの息子だなんて、誰も思わないだろう。


横目で宏樹を見ていると、片手で本を開いたままペットボトルの蓋を開けるのを見た。


心臓がドクンッと高鳴る。


飲め。


飲め!


宏樹の口がペトボトルの口に触れて、中身をゴクリと飲み下すのがわかった。


あたしは2人と目を見交わせた。


上手くいった。


あとは遼太郎に指示を出し、宏樹からお金を奪うだけだ。
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