ただ、彼女の幸せを

夏頃、彼女が落ち込んでいることに気づいた。
後輩が言うには、中学から付き合ってた彼氏と別れたらしい。

彼女をふるやつがいるなんて。

彼女はなにも言わないから、努めて普通に接する。ほんとは心配だし、慰めたかった。

そんなある日。
「ねぇ、まさ。付き合おっか。」

え?!
今なんて?!聞き間違い?!!!

ぽかんとする俺。うれしいとか思う余裕はなくて。
驚きと動揺。
そして。

出した答えは

NO

「そか。そうだよね。忘れて。」
そう言って、悲しげに笑う彼女に胸が締め付けられる。

ほんとはNOなんて言いたくない。彼女と一緒にいたい。彼女のことを抱き締めたい。

でも、やっぱり俺にとって、彼女は光で。眩しすぎて。手をのばす勇気が俺にはなかった。
手をとってしまったら、彼女の光を汚してしまいそうで怖かった。
手放さないといけなくなったとき、耐えられる気がしなかった。

彼女から、好きとは言われてない。俺も言ってない。
だから、彼女がどういうつもりで言ったのかはわからないまま……

結局、それからも俺たちの関係は変わらなかった。あの日のことはなかったように接してる。

そして、1年ほどたった頃、彼女に彼氏ができた。
サッカー部のキャプテン。快活で面倒見もよい彼は、学年を問わず人気がある。彼女には、彼のような人が似合う。俺なんかよりずっと。彼と話す彼女の笑顔は輝いていて、幸せそうだった。

少し胸が痛んだけれど、俺自身が選んだこと。
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