ただ、彼女の幸せを

あれから、10年。
高校を卒業してから、彼女とは1度も会っていない。
たまにSNSで彼女の近況を知るくらい。

ただ、1度だけ彼女にメールを送った。
'結婚おめでとう。お幸せに。'

彼女が結婚することを知った幼なじみが教えてくれた。
相手は、高校から付き合っているサッカー部のキャプテン。あのまま別れることなくうまくいったらしい。
いつかはそのときが来る。それはわかっていたけれど予想以上に複雑な気分だった。

'お幸せに'
手の届かない彼女に、俺ができるのは願うことだけ。

彼女から、来ると思ってなかった返信がきた。
'ありがとう。まさも、一緒に幸せになりたいと思える人ができるといいね'

あぁ。きっと彼女はわかってたんだ。
俺が彼女を、好きだったことも。
あのときNOと言った理由も。

きっと彼女はわかってるんだ。
俺がまだ、彼女を忘れられないことを。

まさ。
柔らかく響く俺の名前。
おそらくもう、呼ばれることのない名前。

堪えきれなくなった涙が頬を伝う。
拭いももせず、ただひたすら泣いた。



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