あしたの星を待っている


後藤というのは、園芸部の顧問をしている先生で保険室の先生でもある。

歳はまだ若く30代くらい、気さくで話しやすく、スクールカウンセラーのような役割もしてくれる人気の男性教諭だ。

ただ、人使いは荒く暇そうにしている生徒を見つけると、雑用を押し付けてくるため生徒の間では、”エンペラー後藤”というふざけたあだ名で呼ばれている。


「瑠偉くんって後藤先生と仲良いよね。カウンセリング受けているの?」


実は私は1年生の頃、後藤先生のカウンセリングを受けていた。

きっかけは体調不良で保健室に行ったとき、先生に何気なく話した内容から、時々、遊びに来るようにと言われたからだったけど、会うたび先生は話を聞いてくれた。

けど、結局は男性と2人で会話すること自体が苦痛で、保健室に行かなくなった。


「いや、俺は付き添い」

「付き添い? 誰の?」


ほんの少し沈黙が落ちた。

何気ない気持ちで聞いてしまったけど、悩みがあってカウンセリングを受けている人の名前を簡単に言えるわけないよね。

ごめん、と言おうとしたとき、瑠偉くんの手に指先が触れた。


「あいつ、」

「え?」

「あの先輩と上手くいってないのか」


薄茶色の瞳と、ぶつかる。

瑠偉くんの声は消えそうなほど小さかったけど、私の鼓膜を揺らし、そして心臓を激しく乱れさせた。

もしかして、もしかして瑠偉くんは、さっきの見てた……?




< 52 / 171 >

この作品をシェア

pagetop