あしたの星を待っている
「あの、」
「言いたくないなら言わなくてもいいけど」
「待って、ねぇ、どこから見てた?」
「は? お前があの先輩としゃがんで何か話してたところからだけど」
あ、なんだ、良かった。
突き飛ばされたところは、見てないんだね。
ホッとしたような、だけど、どうしてホッとする必要があるのかと、複雑な感情が一気の胸の中になだれ込む。
そして、先輩のあの豹変っぷりを思い出し、チクリと棘を立てた。
「ちょっと怒らせちゃったけど、平気。よくある喧嘩」
「喧嘩ねぇ」
「付き合ってるならそういうことあるでしょ?」
「あるかもな」
「でも先輩は優しいから大丈夫だよ」
きっと、また笑顔で迎えてくれる。
何事もなかったように笑って、もういいよって許してくれる。
私が怒らせたりしなければ、次はもっとちゃんと受け入れれば、また優しい先輩に戻ってくれるはずだよね。
「花菜の、」
「え」
久しぶりに名前を呼ばれたと思ったら、鼻をつままれた。
それは子供の頃によくやられた悪戯のひとつで、”花菜の鼻~”っていうだけの、たいして意味のない遊び。
だけど、落ち込んでいる時にこれをやられると、なぜだか笑ってしまって、すぐ元気になる魔法のような遊びだった。