幼なじみとの恋は波乱で。(仮)

告白とカノジョ

「えっと」


名札には、【3-1 柏田】と書かれている。


「は、はい…」

「言いにくいんだけどさ…」


その言葉とその仕草で、

この後、この先輩が何を言うのか、

だいたい想像はできた。


「あんまり長ったらしく言うのもアレだから、

単刀直入に言うね」

「はい」

「私、三浦くんのこと、

好き、なんだ…、よ、ね…」


その先輩----柏田先輩は、

照れたように下を向いてそう俺に告白した。


「あ、ありがとう、ございます」

「だから、その……、

付き合って…欲しいんだ」


先輩は、一語一語を噛みしめるように、

ゆっくりとそう言った。


「あ、はい…」

「あ、でも、もし三浦くんに

別の好きな人がいるんだったら、

私が先輩だから、とか気にせずに、

振ってくれていいんだけど…」

「えっと…。

高校入って…、

あ、長くなると思うんですけど、

いいですか?」

「ん」

「えっと、

高校入ってから、告られたのは、

先輩が初めてなんです。

俺たち1年が入ってきてから

2日しか経ってないのに

告ってくれたのは、

すごい嬉しかったです。

俺、実は、中学で彼女できたこと、

ないんですよ。

まぁ、訳あって」

「え、三浦くんが!?」

「はい。黒歴史なんで、

詳しくは言えない…、っていうか、

言いたくないんですけど」


俺はそう自分を虐げるように

微笑した。


「ん、わかった。続き、聞かせて?」

「はい。

それで、彼女は欲しいんですけど…。

好きな人が今、いなくて。

でも、付き合いたいんです」

「じゃあ…」

「普通に考えたら、

じゃあ先輩と付き合おう、

って、なるんですけど…」


先輩の言葉に被せて俺はそう言った。


「……」

「好きじゃない相手と

付き合っていいのかな、って…。

好きじゃない、っていうのは

嫌い、っていう意味じゃないですよ!?

ただ、俺だけのためを

考えて言ってる訳じゃありません。

相手のこと…、

先輩のことも考えてのことです」

「…ん……。ありがと」

「すみません、こんなこと…。

偉そうに」

「ううん、ありがと」

「俺がいうのも変なんですけど…。

どうします?

その…

付き合います…?」


自分でも、変な言い方だと思う。

上から目線だし。


「んー。

また明日でいい?

明日の放課後、また、ここで」

「わかりました」

「それじゃ」

「はい」



あー。

俺、振られるな…。


振られる、って言うか、

俺が振ったんだよな。


人の気持ち、踏みにじったよな。


俺は

何とも言えないその気持ちを抱えて、

その場にしばらく

立ち尽くしていた。
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