幼なじみとの恋は波乱で。(仮)
Episode 1 【奏 side】

想い出〜中学生〜

「好きです。付き合ってください」


そう、ある女子が俺に告白した。


顔も名前も知らない。

ただ

名札に書かれた【1-2】という文字から

後輩であることはわかった。


「どうして、俺のことが好きなの?」

「え…?」

「だから、どうして…、っていうか…。

俺のどこを好きになったの?」

「えっと…」


その女子は少し考えてから

こう言った。


「三浦先輩は、とにかくバスケしてるところがかっこよくて…!

それに、色んな人に優しくしてるところとか…。

とにかく、かっこいいです!顔だけじゃなくて…。

全部全部」

「ふーん、んで?」

「え…?」

「だから、続き、聞かせてよ。

もっとあるでしょ?」

「え…、えっと…」

「なんでそこで行き詰まるの?

本当に俺のこと好きなわけ?」

「好きです!」


その女子が俺の言葉に被せて言った。


「じゃあ、もっと言えるよね?」


その女子は黙り込む。


「じゃあ君の気持ちは、

そんだけってことだよね?」


今になってから思う。

どうしてそんな人の気持ちを踏みにじるようなこと言ったんだろう、って。

本当に俺は

最低な人間だと思う。


「あの…」

「ん?」

「三年生相手に…、

ましてや、交際申し込んでる身分で、

こんなこと言っちゃダメなのかもしれませんけど…」

「……」

「『君の気持ちはそんだけなんだ』

っていう言葉は

人の気持ち踏みにじってるし、

絶対にそんなこと言っちゃ

ダメだと思います…!」


この時この女子は

勇気を出して言ってくれたのに…。

どうしてこの子を

“ウザい後輩” って

思ってしまったんだろう…。

どうしてこの子の言ってることを

受け取って、自分の言動について

考えなかったんだろう…。


「え…?」


俺が眉間にしわを寄せて言うと、


「……もう、いいです…!」


怒りのこもった声が聞こえた。


「告白の件は、忘れてください」

「ん」

「さよなら」

「ん」


次の日から、その女子とすれ違うことが多くなった。

ただ単に意識するから

すれ違うことが多くなったように

感じるだけかもしれないけれど。


すれ違う時、

その女子とその取り巻きに、

陰口を叩かれる。


まぁ、そんなこと、

気にすることはない。

そんなことをされても、

俺の人気が下がることはない。


俺はいつもそう思っていた。


開き直ることを言うけれど、

そんなことを

言ったり考えてしまうのは、

仕方がないかもしれない。


幼稚園の頃から周りの人には、

「かっこいい」だの「イケメン」だの

言われてきた。


小学校では、

学年のほとんどの女子に告白された。

告白しなかったのは、

桃果ぐらいだ。


バレンタインのチョコなんて、

毎年食べきれないほど貰っていた。

女子からは黄色い声を浴び、

「ヤバイ」だのなんだの言われ続けた。


そうしてここに、

“三浦 奏(みうら そう)” という、

自意識過剰な人間が生まれた。
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