毒舌社長は甘い秘密を隠す
数十分後、九条さんが車を停めた。
ここがどこなのか聞かなくても分かるのは、つい最近訪れたばかりだから。
私は印象的な高層のツインタワーを照らす西日の空を見上げた。
「弊社の物件ですね」
「……えぇ。ずっと狙っていたもので」
まさか井浦社長がここに住んでいるとは言えない。個人情報だし、九条さんがそれを知っているとは限らないだろう。
でも、戸惑う私の様子に気づくことなく、九条さんは井浦社長の住まいとは別の棟へ向かっていく。
彼と話しながらエントランスに向かうと、内見担当者が一礼して名刺を渡してきた。グループ企業の社員と知って一瞬ドキッとしたけれど、私が井浦社長の秘書だとはさすがに気づかれていないらしい。