毒舌社長は甘い秘密を隠す

 担当者とロビーのソファに座り、話を聞く。
 比較的築浅ではあるものの、分譲賃貸物件が四割、売り物件が二割を占めているらしい。あとの四割は住まいやセカンドハウス、SOHOとして所有していると聞いて、井浦社長はその四割に入るのかと思った。


「実は、他社さんで恐縮なのですが、新宿の物件も見てきたところでして」

 九条さんが担当者に打ち明ける。
 すると、勘違いされているようで、「奥様のご意見も参考に、おふたりで決めていただけると幸いです」なんて言われてしまった。

 エントランスで担当者と別れ、マンションを出る。


「間違われてしまいましたね……。すみません、私なんかが九条さんの奥さんだなんて」
「こちらこそ、御社のグループ企業の方が担当されたので、肝を冷やされたのではないかと」
「気づかれていないようですから、大丈夫です」

 これで九条さんの想いが彼女さんに伝わるなら、お安い御用だ。

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