毒舌社長は甘い秘密を隠す

 新卒入社した頃の私も、周りの女子社員同様に、井浦社長に密かに想いを寄せていた。
 だけど、ただの新入社員と社長が恋人になるなんて現実的じゃないし、ライバルも多くて早々に諦めた。
 それでも、彼の優しい微笑みと細やかな心配りに何度もときめいていたのを覚えている。

 その憧憬が一気に打ち砕かれたのは、秘書になってから。

『いいか、俺の顔に泥を塗るようなことは絶対にするなよ』

 秘書になった初日、社長室に呼ばれた私に彼はそう言ったのだ。
 今まで見てきた彼は一体誰だったのかと、目を疑わずにいられない変わりように、背筋がシャンとしたのを覚えている。

 それに昨日は、エレベーターに一緒に乗っていた時、『あぁ、あまりにも小さいから気づかなかった。もっと存在感を出せ』とまで……。

 だけど、いくら冷たく鋭い目つきを向けられても、毒舌で息の根を止められるような気分になっても、彼に抱き続けている尊敬の念は薄れることはない。
 それほど、井浦社長はカリスマ性があり、ひとりの男性としても魅力にあふれている。
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