毒舌社長は甘い秘密を隠す
「わっ!」
背を預けていた社長室のドアが突然引かれ、私は後ろに倒れこんだ。
「なにやってんだよ、このマヌケ」
「す、すみません!」
スリーピースのスーツを着た社長が支えてくれたおかげで、倒れずに済んだ。
予想外の出来事と彼の逞しさを背中で感じてしまって、一瞬でもドキッとしたのが気まずい。
「帰るぞ」
「かしこまりました」
片腕にトレンチコートを掛けた彼は、慌てて体勢を立て直した私に抑揚のない声で言った。
一礼した私は、早歩きでエレベーターまで向かい、ボタンを押す。
さっきまでもふもふした真っ白な部屋着を着ていた人とは思えない、スーツ姿の社長をこっそり横目で見上げる。
この容姿で性格も揃っていたら、もっと仕事が楽しかったのになぁ。
「……秘密は守れよ」
「はい」
私が出した条件は無視され、一方的に秘密を共有させられてしまった。