毒舌社長は甘い秘密を隠す
社長の車も案の定高級車だ。ハンドルにポルシェのエンブレムを見てしまい、さらに緊張してきた。私には縁遠い住まいや持ち物を所有していても、嫌みじゃないのは育ちのよさなのだろう。
まっすぐ前を見て、左で運転する彼の姿が一瞬にして目に焼きつく。
大きな手でハンドルを握る彼の隣に座っているだけで、ドキドキと鼓動が鳴りだした。
その横顔を数日ぶりに見つめただけで、赤く染まった頬が嬉しさで緩む。
「さっきからなに? 運転しにくい」
「す、すみません。つい」
「つい? 俺に見惚れてくれたか?」
「…………」
言い当てられて、なにも言えない。
認めたら彼への想いに気づかれそうだから、否定も肯定もしないでおこうと決める。
今はただ、車内にふたりきりでいられる幸せを味わっていたくなった。