毒舌社長は甘い秘密を隠す
赤信号で車が停まり、沈黙が流れる。
今日のことは怒っていないようだけど、間違いなく不機嫌そうでなにか話題がないかと探す。
「飲み物、持ってくればよかったですね。気付かなくてすみません」
「別にいい。すぐに着くし」
自宅の冷蔵庫に常備している炭酸水のペットボトルを持ってくればよかったと思い、話を切り出した。だけど、毒舌な彼らしい冷たい返事に口ごもる。
「……あの、今日は九条さんと物件を見ていて」
「さっき聞いた」
「本当にすみません。ご報告しておこうと思ったのですが」
私がそこまで言って言葉を区切ると、おもむろに彼が私と視線を合わせた。
「だから、さっき聞いたからもういい」
苛立った様子の彼は、右手を私の後頭部に回して力強く引き寄せた。
「っ!?」
突然迫った彼の顔に、呼吸がままならない。
ひたすら鼓動の音ばかりが気になって、彼を見つめる自分の瞳が揺れているような気がした。
「もうその話は聞きたくない」
あっという間に彼は私の唇を奪い、その間もじっと私の瞳を見つめてくる。
そして、しっとりと唇を離すと、青信号に従ってアクセルを踏んだ。