毒舌社長は甘い秘密を隠す
「私は社長にお仕えしているじゃないですか!」
言い返すけれど、彼はどこ吹く風と聞き流している。
社長にキスをされたのはショックではない。好きな人に唇を重ねられてドキドキしてたまらない気持ちだ。
でも、そこに彼の想いが伴っていないなら、してほしくなかった。
デートもキスも、その一線の先だって、社長となら……。私はそう思っているのに。
「私は、社長のお力になりたいと思っています。その決意は揺らぎません」
「それを聞いて安心したよ」
私の想いに気づく様子もなく、秘書の唇を奪ったのはなんてことないことだと言わんばかりに、彼は満足げに小さく微笑むだけだった。
二時間ほど前に訪れた、社長の自宅マンションにやってきた。
地下駐車場に車を入れた彼は、後部座席から私の荷物を降ろすとなにも言わずに持ってくれた。
「社長、荷物は自分で運びます」
「いい。これくらい俺だってしてやる」
社長と出くわした時、冷たい瞳をしていたと九条さんが言っていたのを思い出し、それとなく隣を歩く彼を見上げる。